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ITアーキテクト、エンタープライズ・アーキテクト、それともデジタルアーキテクト?

—  新しくWEBサイト掲載記事の紹介を始めます  —


読者の皆様、


 Iasa日本支部では、ITアーキテクトとアーキテクチャに一層の関心を持って頂くため、Iasaグローバル(本部米国 )のWEBサイト上に掲載されている記事・投稿の一部の日本語訳を定期的に発進していく事にしました。今回はその第1号になります。


 現在Iasaグローバル(https://www.iasaglobal.org/)上には、実践で活躍中の世界中の多くのアーキテクト達からの新しい投稿や見解が毎月掲載されていますが、現在は英文のみで日本語訳は提供されておりません。(注:2017年末まではIasa日本支部が提携する外部の自動翻訳サービスを利用していました)


 日本の皆様にも感心が高いと思われる英文記事をいくつか選んで日本語訳を定期的に配信していく事にしました。


 この配信にあたり、読者の皆様に予め翻訳品質の点でご了承頂きたい点があります。

翻訳にあたっては、英語原文をGoogle社提供の無料翻訳機能を利用し、日本語訳の用語の間違いと読みづらい個所を中心に校正と編集を行なっています。従って、翻訳文は原文の主旨が理解出来るレベルの翻訳である点を了承の上ご利用下さい。


 皆さんにご紹介したい投稿や記事も大変多くあるため、このシリーズを楽しみにして頂ければと思います。

 

■ 【第1回目の投稿記事サマリー】


 第1回の記事の紹介は「ITアーキテクト、エンタープライズ・アーキテクト、それともデジタルアーキテクト?」という題で、ITアーキテクトの役割や種類、これから益々加速するデジタル化社会のニーズが高まる中、ITアーキテクトがどの様な貢献をする機会があるかをアジアの国々のマーケットと動向に詳しいAaron氏による展望を紹介します。


 原文著者紹介:Aaron Tan Dani氏はデジタル変革のEA分野において特にアジア地区で広く尊敬されているリーダーであり、デジタル変革EAの採用を積極的に推進しています。現在はシンガポール・コンピュータ・サイエンスEA-SIG会長、Iasa Asia地区会長、及び、ATDソリューション社のCEO兼チーフアーキテクトを担っています。

 

■ IasaのITアーキテクチャ/ITアーキテクトの定義


 Iasaは、ITアーキテクチャを「テクノロジー戦略の適用を通じて得られるビジネス、組織、クライアントによる利益の獲得の実践」「価値のあるテクノロジー戦略のデザインとその実現のアート(技能)、もしくはサイエンス(註4)」と定義しています。Wikipediaによるとアーキテクチャには「建築学、建築術、構造」といった意味がありますが、このうち建築術のニュアンスに近いと思われます。構造(モノ)としてよりも、専門職による術(コト)として定義している点がIasaらしいと感じます。


 ITアーキテクトの定義を見てみましょう。Iasaは、ITアーキテクトの役割を「ビジネスのテクノロジー戦略家(註5)」と定義しています。多くの方にとってこれは抽象的な表現かもしれません。ですので、ITアーキテクトの役割についてもう少し考察してみましょう。

 

■ ITアーキテクト、エンタープライズ・アーキテクト、それともデジタルアーキテクト?

 (An IT Architect or An Enterprise Architect or a Digital Architect?)


記事原文ソース:

 私の様に、もしあなたがこの「業界」に長い間いるとしたら、ITとビジネスの世界の両方を跨ぐ必要がある「人」に出会った事がきっとある事でしょう。


 



訳注:(訳注:「デジタルアーキテクト」は、組織のデジタル変革(トランスフォーメーション)を担うアーキテクトという意味で著者が使っています。)

 

■その「人」とはどんな人?


 その「人」がビジネスについて会話をする場合、多分その「人」の名刺には「エンタープライズ・アーキテクト」または「ITアーキテクト」または「デジタルアーキテクト」という役職名が付いている可能性が高いでしょう。もしくは、公であれ非公式であれ、正式な名詞の役職名以外に「ビジネス・アーキテクト」、「情報/データ・アーキテクト」、「アプリケーション/ソフトウェア・アーキテクト」、「テクノロジー/インフラストラクチャー・アーキテクト」、「ソリューション・アーキテクト」等、2つの役割を兼務する場合があります。


 今日多くの場合、「アーキテクト」としての仕事の範囲や内容を深く理解した上で関連する資格を持っていない場合でも多くの人が「アーキテクト」の役職名を与えられているため、この事がアーキテクトが行うべき作業を困難にしている場合が見受けられます。今日、大変多くの組織があらゆる所で「デジタル化」を推進しており、「アーキテクト」に対してもっと前進する様に圧力をかけたり、アーキテクト達が組織と共に前進する事は、これまでは滅多に見られない事でした。


 この様な状況を考慮した上で、Iasa本部による「すべてのITアーキテクトのためのグローバルな協会」(Global Association for All IT Architects)は、エンタープライズ・アーキテクト(EA)の役割の「標準と認定」を正式化するべく努めています。この活動を通じて、しっかり定義された持続可能なキャリアパスを有する業界のエンタープライズ・アーキテクチャーの専門家として正式に認知される事に繋がります。

 

■歴史


 エンタープライズ・アーキテクトの人達はかなり以前からこの業界で活動しています、他の多くの専門的な職業に比べると比較的新しいものです。その結果、エンタープライズ・アーキテクチャーに関わる専門的職種についての正式な標準や職種の定義やスコープは、ずっと最近になるまで普及しませんでした。


 幸い、ザックマン・フレームワークのジョン・ザックマン氏によって、1990年代初めにエンタープライズITの初期の採用者の間で「エンタープライズ・アーキテクチャ・フレームワーク」という用語が普及しました。これに続き、1990年代半ばにはEA開発方法論を強調したThe Open Group Architecture Framework(TOGAF)が続きました。

(参照リンク: https://ja.wikipedia.org/wiki/TOGAF


 その後、私達Iasa(Iasa Global)では、2000年後半にITABoK(IT Architecture Body of Knowledge)を紹介しました。これは専門のトレーニングと認定プログラムの一環として提供したアーキテクトに必要な「スキルセットの要件」を通じて、「エンタープライズ・アーキテクト」を正式な専門的な職業とするためのものです。


 次の図は、Zachmanフレームワーク、TOGAFフレームワーク、およびIASAのITABoKを示しています。


左図 (出展:ザックマン・インターナショナル社)、中央 (出展:オープン・グループ資料)、右図 (出典:Iasa ITABoK)

 この記事では主にIasaのITABoKのスキルセットに焦点を当てます。このスキルセットは、広く認識され持続可能なキャリアパスを持ち成功するアーキテクトになるためのコンピテンシーの要件を定義する事を支援します。


 上の図で説明したITABoKの5つの柱は、5つの基礎スキル分野に焦点を当てており、「ビジネス・テクノロジー戦略」、「ヒューマンダイナミクス」、「IT環境」、「品質属性」、そして「デザイン(設計)」で構成されています。


 この中の「ビジネステクノロジー戦略」は、「アーキテクト」をその他のITの専門家と差別化する点が特に綿密に位置付けられており、全ての各種のアーキテクトの活動を関連するビジネスに結びつけるという非常に重要な役割を担っています。

 

■現在は...


エンタープライズ・アーキテクトは、ビジネスとITの両方を担わなければならず、IT部門がどんな事を実施しようとそのビジネス戦略を実現しなければなりません。したがって、エンタープライズアーキテクトは、戦略計画委員会等に参加して支援する必要があります。


また、企業全体に及ぶすべてのビジネス領域とITの取り組みの溝(トラブルシューティング)、及び完全なトレーサビリティを容易にする「デジタルエンタープライズ・マップ」の作成をする必要があります。とりわけ、「アーキテクチャレベルのソリューション」を通じて、高度なビジネス戦略の間のギャップを埋める必要があります。


IasaのITABoKでは、5つのEA専門分野を定義しています。 即ち、「ビジネス・アーキテクチャ」、「情報アーキテクチャ」、「ソフトウェア・アーキテクチャ」、「インフラストラクチャ・アーキテクチャ」、「ソリューション・アーキテクチャ」です。


ビジネス・アーキテクトは、ビジネス戦略の中でテクノロジー戦略を支援するためにビジネスがどのように構成されているかを文書化するための共通のエンタープライズレベルのビジネス言語とフレームワークに焦点を当てます。


情報アーキテクトは、情報の保管、回収、配信、分類、利用などの情報リソースのマネジメントに注力し、株主価値を最大限に引き出すとともにテクノロジー戦略をサポートします。


ソフトウェア・アーキテクトは、ソフトウェアとソリューションの実装に関する技術戦略の提供と開発に重点を置いています。


インフラストラクチャ・アーキテクトは、開放型システム間相互接続(Open System Interconnection)、またはOSIの7層モデルの最下位4層に重点を置いており、運用、ネットワーク・エンジニアリング、サーバーサイジング、ストレージ管理、バックアップ&リストア技術、ディザスター・リカバリー、および物理的なデータセンターの設計を支援します。


ソリューションアーキテクトは、ビジネス/情報/ソフトウェア/インフラストラクチャ・アーキテクチャからの情報に基づいてソリューションを提供することに重点を置いており、PMO(プログラムマネジメント・オフィス)が実施するITプロジェクトを通じてアーキテクチャを実現します。


 しかし確かな事は、今日のエンタープライズ・アーキテクトは、従来の狭い領域のスコープや役割からより広いエンタープライズレベルの役割を持つべく変遷しています。この変遷の中には、ビッグデータ分析、IoT, クラウドの仮想化テクノロジー等の最近のデジタルテクノロジーのトレンドが含まれます。


 ガートナー社は、2025年までに、エンタープライズ・アーキテクトは、組織内でプロセス、ネットワーク、依存関係を設計するだけでなく、所属する組織の外部を含むエコシステムを組み込むことになると予測しています。

(訳/編集者注) 上の右の日本語訳はガートナー社による正式な翻訳ではありません。

あくまで本記事の参考情報として掲載しています。

 

■今後に向けて...


 今日のデジタル化の環境は、デジタルを中心に置くエンタープライズ・アーキテクトの役割に新たな次元を加えました。デジタル・エンタープライズ・アーキテクトは、エンタープライズ・アーキテクチャの取り組みを通じて組織内のデジタル変革をリードする事を担っているのです。


 デジタル・エンタープライズ・アーキテクトの役割はこれまで以上に重要になりつつあり、どの業界のどんな組織や企業、政府機関であれ、チーム内にいなければ誰かがエンタープライズ・アーキテクトとしての役割を果たす必要があると強く確信しています。


 実際のところ、今日多くの組織はこの役割をまだ持っておらず、急速に変化するデジタル時代に生き残りと競争に日々予測できない混乱に直面しているのです。


 実際、アーキテクトを採用し、組織内に正式なEAO組織(Enterprise Architecture Office)を設置する事の緊急性は、このデジタル時代に勝つためにその組織に大変戦略的なアドバンテージを与える事でしょう。


 デジタル・エンタープライズ・アーキテクトは、モチベーション&戦略レイヤーからビジネスレイヤー、アプリケーションレイヤーからテクノロジーレイヤー、実装の移行レイヤー、またはその逆の複数のレイヤーにわたるデジタルEAマップの作成を通じて、ビジネスとITの統合を担います。


 その上で、適切な投資プロジェクトのポートフォリオは、ITリソースを最大限に活用し計画されたビジネスの結果を達成すべく、ITプロジェクトを通じてPMOによって計画的され実行する事が可能になるのです。


 組織のデジタル化の支援に留まらず、デジタル・エンタープライズ・アーキテクチャマップを活用して全体のトレーサビリティを可能にし、エンタープライズレベルのギャップの修正機能を有効にすることが出来るという点が、私がエンタープライズ・アーキテクトの役割が非常に重要であると考える理由です。


記事英語原文: By Aaron Tan Dani



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