top of page

検索結果

  • さえずり

空の検索で328件の結果が見つかりました。

イベント (80)

全て表示

記事 (92)

  • BTABoK Decisions ~ AI時代のアーキテクチャ意思決定 ~

    新年明けましておめでとうございます。2026年、私たちのエンジニアリング環境は、生成AIの急速な進化によって劇的な変化の中にあります。あらゆる仕事の自動化が進み「人でしかやれないこと」との境界線が問われる今、アーキテクトにとって最も重要なテーマは、技術の選択を超えた 「意思決定」の本質 に立ち返ることではないでしょうか。本稿ではアーキテクチャ意思決定をテーマに、グローバルな知見であるBTABOK(Business Technology Architecture Body of Knowledge)を紐解きながら、これからのアーキテクトが担うべき役割を考察します。 参考 IASA Global, BTABoK – Decisions https://iasa-global.github.io/btabok/decisions.html ※本コラムはBTABoKの内容を要約・解釈したものであり、厳密な定義や詳細は原典を参照してください。   ・今なぜ意思決定が主要テーマとなるのか 昨今の生成AIの熱狂は、ソフトウェア開発の風景を一変させました。コード生成からデバッグ、ドキュメント作成に至るまで、AIはプログラマーの強力な代替、あるいは補完として機能し始めています。しかし、DX(デジタルトランスフォーメーション)の本質が「ビジネスモデルの変革」にある以上、真に重要なのは、個々のコードの良し悪しではなく、 「エンタープライズレベルでの重要な意思決定」 です。「AIが全ての判断を代行してくれる」という期待は、現時点では幻想に過ぎません。アーキテクチャ上の決定は、技術的な合理性だけでなく、組織の政治、予算、将来の拡張性、そして人間社会への影響といった複雑な要素が絡み合うからです。AI時代だからこそ、アーキテクトには、自動化できない「責任ある選択」を行う能力がこれまで以上に求められているのです。 ・アーキテクチャ意思決定の3階層モデル アーキテクチャにおける意思決定は、その影響範囲によって以下の3つの階層(スコープ)で捉えることができます。 戦略層(エンタープライズ・エコシステム):  企業全体や、その顧客・サプライヤーを含むエコシステムに影響を与える決定です。ERPの選択やクラウド戦略、業界標準の採用などがこれに該当し、より低レベルの決定を導く「ガードレール」としての役割を果たします。 戦術層(バリューストリーム・ソリューション):  複数の製品やサービスを支えるソリューションレベルの決定です。ビジネス価値を生み出すための一連の流れ(バリューストリーム)全体に影響を及ぼします。 実行層(製品・サービス・モジュール):  特定の製品、あるいはシステムのサブコンポーネント(モジュール)に関する決定です。隣接するサービスには直接影響を与えない、局所的な最適化が含まれます。 アーキテクトは、今自分が行っている決定がどの階層に属し、どの範囲に影響を及ぼすのかを常に意識しなければなりません。重要なのは、これらが独立して存在するのではなく、 連鎖的に影響し合う 点です。上位の意思決定は下位の選択肢を制約し、下位の判断の積み重ねが戦略の成否を左右します。 ・アーキテクチャ意思決定の本質と原則(BTABOKの視点) BTABOKにおいて、アーキテクチャ上重要な決定(ASD: Architecture Significant Decisions)は、マーティン・ファウラーの言葉を借りれば「重要なもの」と定義されます。BTABOKによれば、ASDの目的は決定事項を明確にし、要件や設計の理由、結果と関連付けて追跡可能にすることにあります。 ここでは、アーキテクトが知っておくべき意思決定の原則を、BTABOKに基づき解説します。 ① 意思決定のトレーサビリティ 優れた意思決定には、ビジネスゴールから要件、設計理由、そして最終的な測定に至るまでの 一貫した追跡可能性(トレーサビリティ) が不可欠です。BTABOKでは、決定事項を「アーキテクチャ決定記録(ADR)」としてリポジトリに公開し、誰でも発見・追跡できるようにすることを推奨しています。 ② 認知バイアスとの戦い 意思決定は常に人間の弱さにさらされています。BTABOKでは、 「アンカリング効果」 (最初の情報に引きずられる)、 「確証バイアス」 (自分の意見を裏付ける情報ばかり集める)、 「サンクコストの誤謬」 (過去の投資に執着する)といった認知バイアスが誤った決定の根源になると指摘しています。アーキテクトは客観的なツール(意思決定バイアス校正器など)を用い、バイアスから意思決定を再構築する努力をしなければなりません。 ③ 「最後の責任ある瞬間」を待つ アジャイルな環境において、コードを書く前に全てを確定させる必要はありません。BTABOKは、 「可能な限り選択肢をオープンに保ち、必要な時、あるいは正当な理由がある時までコミットしない」 という原則を提示しています。これは先延ばしではなく、情報が増え、より賢明な判断ができる「最後の責任ある瞬間」まで代替案を保持し続けるという戦略的な忍耐です。 ④ 技術的プロダクトオーナーとしての責任 最終的に、決定が「価値、複雑性、構造的整合性、ステークホルダー」に影響を与える場合、アーキテクトは 「技術的プロダクトオーナー」 として機能すべきです。企業と顧客のために最大の価値を生むトレードオフが行われているかを確認する責任があるのです。 ・これからのアーキテクチャ意思決定モデル AI時代におけるこれからの意思決定モデルは、 「AIによる支援」と「人間による責任」のハイブリッド型 へと進化していくのでしょう。AIは、過去の膨大なデータから類似の事例を提示したり、スコアリング手法における数値計算を補助したりする点では非常に有益です。 しかし、BTABOKが強調するように、意思決定の本質は「ステークホルダーの管理」や「組織のダイナミクスへの対応」にあります。チームを納得させ、フィードバックを反映させ、企業に対する責任を果たすことは、人間にしかできません。 私たちは、AIを「より速く、より正確な情報を得るためのツール」として使いこなしつつ、最終的な 「価値のトレードオフ」 を担うアーキテクトとしての倫理と専門性を磨き続ける必要があります。 新年の一歩として、まずは身近な設計判断をADRとして記録し、自分の意思決定に潜むバイアスを疑ってみることから始めてみてはいかがでしょうか。その積み重ねが、AIには決して真似できない、真に「重要な」アーキテクチャを築く礎となるはずです。 最後までお読みいただきありがとうございました。 Iasa日本支部では情報交換や勉強会の場を設けております。そこで、みなさんと一緒にアーキテクチャに関する学びを深めていければと思いますので、是非ともIasa日本支部の活動へのご参加、ご協力をよろしくお願いいたします。

  • BTABoK Technical Debt ~ アーキテクトは技術的負債とどう向き合うべきか ~

    はじめに 今回のコラムでは、BTABoKにおけるバリューモデルの一つである Technical Debt について取り上げます。 Technical Debt( 技術的負債)という言葉は日本企業でも広く聞かれるようになりました。しかし、現場での使われ方を見ていると「未完了の作業」「気になるコード」「バグ」「古いシステム」など実に幅広いものがすべて技術的負債と呼ばれています。 本来の意味が曖昧なまま使われることで、かえって問題が見えづらくなる場面も多いのではないでしょうか。本稿では、BTABoKの整理を土台にアーキテクトとして技術的負債をどう捉え、どう扱うべきかを考えてみます。 技術的負債とは もとはWard Cunninghamが示した比喩で、短期的に価値提供を優先するために、あえて最適でない設計を選ぶことを負債に例えたのが始まりです。本質は次の一点にあります。 短期的には便利だが、将来の変更を高価に、あるいはほぼ不可能にする構造的な選択であること。 コードをリファクタリングしてすぐに返済する限り、負債を一時的に抱えること自体は問題ありませんし、有益でさえあります。ところが実務の現場では、この「返済する」という後段が無視されがちです。返済前提の負債が、返済されないまま放置されていくことで、 変更がどんどん高価になる 機能追加が遅くなる 品質が不安定になる といった問題が積み上がり、技術的負債が組織にのしかかっていきます。 技術的負債と誤解されがちなもの 便利な言葉であるがゆえに、完璧でないものを技術的負債と呼ぶ傾向があり、本来負債と呼ぶべきでないものまで含まれがちです。以下の項目は一般的に技術的負債とは見なされません。 未完了のユーザーストーリー 単にやり残しであって技術的負債ではありません。 バグ(欠陥) すでに顧客価値を損なっている問題であり、負債ではなく今すぐ対処すべき品質問題です。 プロセスの欠如 プロセスの欠如自体は技術的負債ではありません。 ただし、プロセスの欠如、間違ったプロセス、またはプロセスに従わないことは結果として不必要な技術的負債を生み出す可能性があります。 未実装の機能 まだ実装されていない新機能は技術的負債ではありません。 ただし、初期要件が不十分なままギャップを埋めるための暫定対処を行うと、その近道が結果として技術的負債を生む可能性があります。 なぜ技術的負債は発生するのか 技術的負債は、必ずしも軽率な判断や不注意だけで生まれるわけではありません。多くの場合、ビジネスの現実に起因しています。 まず、ビジネスモデルが大きく変化し、急いで対応しなければ市場で生き残れない場面では、最適とは言えない技術選択を取らざるを得ないことがあります。 競合が激しく、顧客から新機能を求められるプレッシャーが強い場合も同様で、短期的な価値提供が優先され、結果として負債が積み上がります。 また、意外と見落とされがちな原因に「リライトやリプラットフォーム」があります。 新しいプラットフォームは新規顧客にフォーカスしますが、既存顧客は旧システムで長期間サポートする必要があります。この期間、IT部門は旧と新の両方に機能追加や保守を行う二重負荷を抱えるため、負債がむしろ増えてしまうことがあります。 さらに、M&Aも技術的負債の大きな要因です。 買収先の製品に内包された負債を意図せずそのまま引き継ぐことがあるためです。特にスタートアップ製品はスピード重視で作られるため、負債を内包していることが多く、それが後から顕在化します。 このように、技術的負債は単なる設計ミスではなく、 ビジネス環境・納期圧力・刷新プロジェクト・M&Aといった「ビジネスの現実」から自然に発生するものなのです。 技術的負債の種類ごとの向き合い方 技術的負債は放置しても自然には減りません。 しかし現実には、技術的負債を計画的に管理できていない組織も少なくありません。 加えて、技術的負債には種類があり、組織のどのレイヤで扱うべきかも異なります。 短期メリットと長期コストのトレードオフ(チームレベル) 短期の価値を優先するために、本来あるべき設計や実装を後回しにした暫定的な作りが発生するケースです。こうした負債は、記録・優先付け・リファクタリングによって、チームレベルで十分対応できます。 雪だるま式の負債(プロダクト/プログラムレベル) 技術的負債が積み重なり、製品全体の保守や拡張が難しくなる状態です。 この段階では、個別チームではなく、プロダクト/プログラム単位での改善施策や投資が必要になります。 時間とともに陳腐化する負債(事業部レベル) システムや製品が古くなり、得られるビジネス価値に見合う投資が難しくなる段階です。 この状態では、事業部レベルで投資を見直し、場合によってはシステムを廃止する判断が求められます。 レガシー負債(事業部〜会社レベル) 使われている技術やアーキテクチャが古く、サポートが難しくなっている一方で、そのシステムが提供する機能は依然として事業にとって不可欠な状態です。 このような負債には、慎重な移行計画や投資判断が求められ、事業部〜会社レベルでの意思決定が必要になります。安易なリプラットフォームは新たな複雑性を生むため、注意が必要です。 コードの肥大化(チーム+全社IT原則) コードが無秩序に膨らんで複雑化していくタイプの負債です。 チームでの自律的な管理に加え、全社的なIT原則による統制が必要になります。 技術的負債への対応は、プロダクトの成熟度や組織の意思決定構造によっても変わります。 種類に応じて、どのレイヤで扱うべきかを見極めることがコントロールの第一歩です。 技術的負債は「可視化とガバナンス」がなければコントロールできない 金融負債と同じように、技術的負債も見える化しなければ適切に扱えません。 どれだけ負債があるのか 時間とともに増えているのか減っているのか どの負債がどのビジネス価値やリスクに紐づくのか これを判断するために、SonarQubeやSQALEなどで負債を定量化するアプローチがあります。 しかし、計測だけでは技術的負債をコントロールすることはできません。 大切なのは、技術的負債をどう扱うかについて組織としての期待を明確にし、その基盤を整えておくことです。 例えば、 完了の定義(DoD) コーディング標準 アーキテクチャの原則 技術的負債に関わる重要な判断を記録する仕組み(ADR:Architecture Decision Recordなど) といった環境を整えることで、不要な負債の発生を抑え、必要な負債だけを戦略的に負うことができます。 アーキテクトは「技術的負債というローン」を設計する役割を担う BTABoKでは、 Technical Loan Request Card というキャンバスが提示されています。これは、意図的に大きな技術的負債を負う決定を行う際に、ビジネス価値・影響範囲・返済コスト・返済計画をセットで記録するためのものです。 「なぜ今この負債を許容するのか」「いつ・どのように返すのか」を最初からワンセットで設計するイメージです。 アーキテクトはプロダクトオーナーやビジネス側と対話しながら「どの負債は戦略的に許容し、どの負債は即時返済するか」を設計する役割を担う存在とも言えます。 負債をゼロにすることが目的ではなく「ビジネス価値と将来コストのバランスが取れたポートフォリオ」にしていくことが狙いです。 技術的負債は複雑なテーマですが、その本質は「将来の変更性を損なう構造的な選択」にあります。 負債には種類があり、対処すべき組織のレイヤも異なります。そして何より、負債は返済計画がなければ雪だるま式に増えていきます。アーキテクトの役割は、この負債を見える化し、ビジネスと技術の両面から最適な判断を下すことです。技術的負債という概念を正しく使いこなすことが、ビジネス価値、将来のコスト、そして組織全体の持続的な変化能力のバランスを取るうえでの鍵となります。 ご一読いただきありがとうございました。 Iasa日本支部では情報交換や勉強会の場を設けており、システムの視覚化についても研鑽を深めていますので、今後のIasa日本支部の活動へのご参加、ご協力をよろしくお願いいたします。

  • (個人・法人会員限定) アニュアル・カンファレンス 2025 講演資料

    2025年10月29日(水)、30日(木)の2日間に渡り開催された「 アニュアル・カンファレンス2025 」の各講演で使用した資料です。

全て表示

その他のページ(154)

全て表示
bottom of page