実装主義と設計主義 ~シニアアーキテクトからの警鐘~
- 中山 嘉之

- 4 時間前
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最近のシステム開発では、モデリング等の論理設計を省いていきなり実装とテストを繰り返しながらゴールに辿り着くという実装主義が、Z世代にとっては主流になりつつあるようだ。確固たる方法論に基づいた設計ありきの構築をしてきた設計主義のベテランアーキテクトは、この理屈にこだわらない開発手法に取って代わられることに、ある種の喪失感を感じざるを得ない。
この事はテクノロジーの進化によって詳細なロジックをカプセル化する事で、生産性と品質を追求した果てにたどり着くものである。これにより、エンジニアは自ら産み出したプロダクトによって職を失いかねないというジレンマに陥ることになる。とは言え、ことさら古いやり方の良さを吹聴し、技術の進化に対する危険性のみを主張する輩は見苦しい老害と言えよう。絶えず新しいテクノロジーを用いて生産性を追求することはエンジニアの取るべき道筋である。ではシニアアーキテクトは黙ってリタイヤすれば良いのだろうか。
この疑問が生じる背景には、良い道具さえあれば問題が解決するというツール至上主義がある。これが行き過ぎた場合には、ゆるぎないセオリーをも踏み外すことさえある。結果的に試行錯誤を繰り返すあまり、せっかくの自動化もかえって多くの時間とコストを費やしかねない。その典型的な例がAIである。AIは整理整頓が出来ていないビッグデータから高速に整理した結果を出力するパワーを秘めている。過去にセオリーを学んでいない人もそれなりの出力が期待できるので、ロジックを追求する必要は無駄だと考える。しかし、どんな優れたAIもGarbage in Garbage out であり、予期しない結果が出た場合には誤りの箇所を発見することに苦労することになる。
ベテランはこのようなアンチパターンを唯々見過ごすのではなく、嫌がられることを恐れずに優しくアドバイスを与える必要がある。また、一方のZ世代もベテランのアドバイスを鬱陶しいと拒絶するのではなく、時には耳を傾けることが必要である。企業内のIT従事者を30~60歳の従業員と仮定すると、過去30年間でIT従事者はほぼ全てが入れ替わったことになる。この間、IT(情報技術)は劇的な変化を遂げたものの、IS(情報システム)の本質的なロジックは普遍的なものが多い。にも関わらずZ世代の担当者にはISの普遍的ロジックを学ぶ機会が与えられてこなかった。
歴史の浅いIT業界の従事者は本質が変わっていないにも関わらず、道具が変わることで全てを一からやり直すというムダな時間を費やしてきた。これまでベテランが有するセオリーを伝承してこなかったソフトウェア開発も、建築、機械、電気といったハードウェアと同様に、設計図(モデル図)で次世代に継承することが求められる。進化し続けるITを用いたシステム開発は、全てをゼロベースからやり直すのではなく、モデルに立ち戻ることで効率的なリスタートが可能になる。また、根本的にモデルを変えるDXにおいては、なおさら現在のモデルとの対比を明らかにする必要がある。今日、行き過ぎた実装主義に警鐘をならし、論理設計を重視することは、若手、ベテランを問わず考えなければならない大きな課題である。
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