BTABoK Engagement Model(5)~エンゲージメントモデルの中核~

BTABoK紹介シリーズとして4回に分けて、パブリックレビューで公開中のBTABoKV3.0で新たに追加されたエンゲージメントモデルの中から複数のモデルを紹介してきました。具体的には、下図の4つのサブモデルです。

・アウトカムモデル

・オペレーティングモデル

・バリューモデル

・ピープルモデル

エンゲージメントモデルの全体的な目標とは、ビジネステクノロジー戦略を実現するために、アーキテクトチームの活動を最大限に活用することと言えます。アーキテクトの組織は、これらのモデルを活用して、成熟した価値あるアーキテクチャの実践のための「活動、成果物および作業」を定義することができます。つまり、エンゲージメントモデルの目的は「アーキテクチャの実践」そのものと言えるのです。エンゲージメントモデルの中核にはアーキテクチャ実践モデルがある、というのがBTABoKの考え方です。BTABoKでは5つの節に分けて、アーキテクチャ実践モデルの内容が述べられています。https://itabok.iasaglobal.org/itabok3_0/architecture/


1.What is an Architecture Practice  多くの組織における考え方と何が違うか? 2.Why is a Practice Important to Architects  アーキテクチャ実践モデルへの転換がもたらす課題とメリット 3.Competencies, Career Path and Advancement  専門職の基本要素と、コンピテンシーモデルとの関連 4.The Architects Practice in the Enterprise  アーキテクチャ実践の主要な成功要素 5.Building an Architecture Practice  アーキテクチャ実践が責任を担うべき活動とは

今回は、このアーキテクチャ実践モデルを見ていきましょう。

 

1.What is an Architecture Practice

最初にまず押さえておくべきことは、アーキテクチャ実践モデルとは特定の手法やテクニックというよりも、マインドセットそのものであるということです。その背景にある考え方は、「プロフェッショナルとは特定のスキルを学ぶことで成長し、そのスキルを応用して価値あるものを作り上げる」というものです。例えば、医師は医師の、看護師は看護婦の、そして経営陣を含む運営スタッフはスタッフの、教育・スキルの習得・昇進・メンタリングについて、それぞれ異なったモデルに従っています。しかし、多くの組織ではアーキテクトなどの専門職にとってそのようなモデルになっていません。確かに、資格や面接、経験を見て、その人がどのような仕事に適性があるのか判断していることでしょう。しかし、その時々の組織の内部政治、政策、構造にひきずられていることが依然として多いのが現実です。そうではなく、専門職の中で共有される知識群、さらには各専門分野の習得を中心にキャリアを捉えることが実践的な考え方です。学習、指導、能力の向上、資格取得、そして何よりも現代的な知識体系のもとで能力を発揮することが、個人のキャリアを導きます。 2.Why is a Practice Important to Architects

この節では、アーキテクチャ実践モデルへの転換がもたらすメリットと課題があげられています。詳細はBTABoKを参照いただければと思いますが、ここでは主なものを抜粋します。そのメリットとして以下のような項目があげられます。 ・最新のメソッドやテクニックの効果的な導入

・明確な役割分担の相互作用

・組織横断的な共通コンピテンシー

・より成功したデリバリー

・信頼と倫理

・体系的なキャリアパス

ただ、こうしたメリットは無料で手に入りません。次のような課題に立ち向かう必要があります。 ・人材の確保と定着の難しさ

・価値の理解度の低さ ・技術的負債とレガシーモダナイゼーション

このリストは実践モデルに投資することの長所と短所を網羅したものでは決してありませんが、そうすることによって得られる価値を明確に定義しています。

3.Competencies, Career Path and Advancement

「アーキテクトとは何か?」という問いは、これまでにも多く語られてきました。しかし、それは根本的に間違った問いに焦点をあてているとBTABoKは述べます。BTABoKによれば、次の4つの基本要素によってどんな職業も定義されます。 a) 社会に対する価値提案

b) それを実践するために必要な能力

c) 最新の、よく知られた知識体系、

d) 個人がその職業の最高レベルまで昇進するための方法 これらの要素は、自然法則や哲学的な議論によって決定されるものではなく、十分な人数の人々が協力し、それらに同意し、その基準を社内外で実施し、社会、政府、一般人に対して支持することによって決定されるものです。それを決定するハードルは高いでしょう。でも、医師を目指す人にとって大学の医学部での認定の難しさを考えてみてください。人間の安全、アイデンティティ、グローバルセキュリティ、組織の財政的利益にとってそれが重要なものである場合、真の専門的なインフラストラクチャが必要となります。BTABoKは、技術戦略とアーキテクチャがこの重要な段階に達しているという考えに基づいています。


4.The Architects Practice in the Enterprise

この節では、エンタープライズにおけるアーキテクチャ実践の成功要素が述べられます。一口にエンタープライズといっても、1人から15人の組織と1000人以上の大企業の間には大きな違いがあるでしょう。しかし、BTABoKで定義される手法は、規模を拡大しても縮小しても対応できます。ただし、エンゲージメントモデルを理解し、実践モデルが組織に適合していることが不可欠です。以下に主要なアーキテクチャ実践の成功要素を列挙します。これら成功要素とアーキテクトの活動を整合させることが基本であると、BTABoKでは述べられています。 ・コンピテンシーと経験に基づくキャリアパス

・成果に基づく価値観

・ドライバに基づく品質属性 ・実践における成熟度の現状理解と、それを高めるための道筋


特にアーキテクト組織が成熟に向かう初期段階では、「非アーキテクト」でありながらアーキテクチャの仕事をしているようなステークホルダーを、その組織に加える必要があるかもしれません。BTABoKではそうしたアーキテクト組織のことを、拡張チームと呼びます。拡張チームとは、専門職としてのアーキテクト組織が確立されていない環境において、アーキテクトコンピテンシーを発揮するようなチーム構成を作ることです。それは、多くの組織で、プロジェクトや能力のポートフォリオを完全にカバーするのに十分なアーキテクトがいないことから必要とされます。

アーキテクトとしての仕事は一人だけではやり遂げられません。専門家として支えてくれるパートナーとの関係が鍵です。アーキテクトとして成果をあげるために、自分にないスキルを持つ多様な協力者を巻き込んでいきたいものです。そして、彼らと手を組んで成果をあげていくために、アーキテクトとして行うべき活動と身に付けておくべきスキルは何かを定義することは非常に重要となるでしょう。


5.Building an Architecture Practice

最後に、アーキテクチャ実践が責任を担うべき活動です。アーキテクチャ実践は、以下の5種類の活動に説明責任を持たねばならないと、BTABoKは述べます。 <運営組織の構築> 運営組織の目的は、エンゲージメントモデルを構成する実務、役割、タスク、成果物などを定義することです。その構成メンバーは、小規模で、かつ組織のアーキテクトを代表するのに十分な規模を持ちます。主要ベンダーやサービスインテグレータの代表者、業務の成功に深く関与している「若手アーキテクト」を参加させる必要があります。 <人の成長>

他のグループや利害関係者との相互関係を明らかにし、彼らとのタッチポイントを理解することが不可欠となります。 <成熟度の向上>

成熟度は、デジタルアドバンテージの成果への影響を理解することによって測定されます。アーキテクトは、ビジネス部門と連携してデジタルアドバンテージを実現し、これらの目標やその達成状況を設定し測定しなければなりません。 <信頼と自覚の向上>

雇用主やクライアントから、アーキテクチャの実践が望ましいと思われることが不可欠です。それとあわせて、実践が組織の能力としてどのように認識されているかについて、アーキテクト自身の意識を高めていくことも求められます。

<エンゲージメントモデルの管理> アーキテクトの業務遂行において使用するプロセス、成果物、およびツールをマネジメントすることです。それは全体からのフィードバック、実験、および成功に基づき更新する必要があります。


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ここ数年でわたしたちの生活も大きく変わりました。その変化のなかで、社会、公共、企業のあらゆるレベルでデジタル技術が不可欠な存在となりました。わたしたちは、このデジタライズされたプラットフォームを活用するだけでなく、その上で多様なステークホルダーとコラボレーションしていく必要があります。これからのアーキテクトは、そうした状況でよりよい実践をし続けるために、エンゲージメントモデルを駆使していかねばなりません。


今回はエンゲージメントモデルの核心ともいうべき、アーキテクチャ実践モデルを解説しました。Iasa日本支部では引き続き、BTABoKをテーマとした勉強会やガイダンスとなる情報発信を行っていきたいと考えています。今後のIasa日本支部の活動へのご参加、ご協力をよろしくお願いいたします!

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