今回はBTABoK 3.0のコンピテンシーモデルについて、私の解釈も踏まえながら紹介します。コンピテンシーについてはITABoK 2.0と比較して表現の仕方は違えど、大きな変更点はないと感じています。ただ、「コンピテンシーモデル」という形で「コンピテンシー」に特化した形で記載されているので、少し読みやすくなった印象を受けます。それでは中身をみていきましょう。
BTABoKではコンピテンシーについて以下のように説明されています。
(BTABoKより抜粋)
● 特定の責任範囲または領域に関して十分な知識、判断力、スキル、強みを持っている
状態、またはその質を維持している状態
● 規定上の権限、力量、または許容性があること
コンピテンシーは、アーキテクトおよび個々の実務を行う専門家にとって最も重要な要素です。これには、一般的にアーキテクトとして必要なすべてのスキルが含まれ、具体的には、価値を提供するためにアーキテクトを採用する組織の状況や目的に応じて決まります。BTABoKでは、スキルとコンピテンシーは同じ意味で使用されますが、正式には次の階層を使用します。
a. コンピテンシーの柱
ビジネステクノロジー戦略、設計、ヒューマンダイナミクス、IT環境、品質属性など、アーキテクトのコンピテンシーの5つの柱の1つ。
b. コンピテンシー
投資計画、システム全体設計、アプリケーション開発など5つの柱に含まれる42の項目。
c. スキル
学習目標、成長レベル、および学習教材も付いた、コンピテンシーを支える特定の実用的なスキル。サブコンピテンシーと考えることも可能。
したがって、コンピテンシーとは、アーキテクトがキャリアを通じて磨き、開発し、成長し、成功するアーキテクトになるために必要なスキルの組み合わせとなります。
上記の説明をコンピテンシーに関する構成要素とその関係性を表した概念モデルが図1になります。

このようにアーキテクトが持つべきコンピテンシーに関する構成要素を整理・把握することで、以下のようなメリットが得られると考えられます。
アーキテクトが持つべきコンピテンシーを整理・把握するメリット
職業としてのアーキテクトの認知度が向上する
アーキテクト自身の学習意欲が向上する
アーキテクト育成のキャリアパスを考えやすくなる
アーキテクトが持つコンピテンシーを客観的に評価できる
アーキテクチャデザイン成果物の品質を保証しやすくなる
etc...
なおコンピテンシーの説明にあった「アーキテクチャの5つの柱」はITABoK 2.0 のときのものと同じです。(表1 参照)
表1 アーキテクチャの5つの柱
また、アーキテクチャの専門領域もITABoK 2.0と同様です。(表2 参照)
表2 アーキテクチャの専門領域
なお、このようにコンピテンシーやスキルを体系化したフレームワークとしては、以下のようなものがあります。(表3 参照)
表3 その他のスキルフレームワーク
いずれも網羅的、汎用的で、広い意味での“IT技術者”を対象としたフレームワークです。個人的にはさまざまな領域に興味があるので、網羅的に理解するための読み物としては非常に参考になります。ただ、“アーキテクト”や“実践的”観点からすると、これらを導入しようとする組織にとってはテーラリング作業に労力を割く必要が出てくるかもしれません。
一方、BTABoKのコンピテンシーモデルは“アーキテクト”および“実践的”を売りにしているので、アーキテクト育成を目的とする場合などは、BTABoKのコンピテンシーモデルを活用することで、人財育成のスピードおよび精度向上につながることが期待されます。
私自身は「インフォメーションアーキテクチャ」領域を中心に仕事をすることが多いので、自分の仕事を俯瞰的に見たいときにITABoK 2.0の「2.2.2 インフォメーションアーキテクチャの専門領域」を参照し、思考の抜け漏れの有無などを確認することに使ったりします。そこからさらに深い知識を得る必要がある場合は、DMBOKや他の専門書を参照したりしています。
これは私の持つ、BTABoK 3.0に対する印象ですが、ITABoK 2.0に比べると、よりビジネス価値を得るために必要な知識体系をよりわかりやすく、実践的なものにまとめようとしていると感じています。まだドラフト版ではありますが、アーキテクトに必要なコンピテンシーを俯瞰的に把握するための参考にしていただければと思います。
ご一読いただきありがとうございました!
以上
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