クラウドもArchiMateで描こう ~11月のアニュアル・カンファレンスに向けて~

はじめに

Iasa日本支部は来る11月4日にアニュアル・カンファレンスを開催します。このイベントで株式会社アーキテクタス代表取締役の細川様より「クラウド時代のアーキテクチャと人材育成」のタイトルでご講演をいただきますので、ここでもクラウドに関する話題を取り上げてみたいと思います。クラウド・ファーストが常識となってもうずいぶん経ちますが、 他部門、とりわけビジネス部門へのクラウドの説明にはまだまだ多くの方々が苦労されているのではないでしょうか。やはりここはモデルを描いて説明できると良いですね。ただ、おたがいエンジニアであれば、クラウドベンダーオリジナルのアイコンを駆使したカッコよいモデル図で話も進みますが、おなじ図をビジネス部門に見せても、あまりわかってもらえないかもしれません。かといって、ビジネス部門向けに別にモデルを描くのも面倒です。IT部門とビジネス部門、両方で役に立つモデルを描きたいとき、ArchiMateはとても役に立ちます。


実際に描いてみた

まずはこちらの図をご覧ください

AWSの初心者向けテキストなどでおなじみのサンプルですね。表記が全て英語なのは、以降のサンプル図も含め、たまたま元ネタが英語だっただけで、ArchiMate自体はUnicode対応で日本語も問題なく扱えます。

ArchiMateはデフォルトのノーテーションだと、まず初見のヒトにはすこし抵抗があるかも知れませんし、華のない地味な見た目になりがちですが、こんなふうにArchiMateという本当の姿を隠して、初見のヒトにも抵抗のない、いかにもよくあるAWSインフラアーキのモデルのような見た目も実現できる、ということです。


Archi®の新機能「Specializations Manager」

どうすればこのような見た目を実現できるか、ですが、ほとんどの皆さんはArchiMateを描くのにArchi®をお使いでしょう。Archi®で見た目をデフォルトから変える方法はふたつあります。

ひとつは「Custom Image」で、要素ごとに画像を設定する方法です。これはビューレベルの設定で、モデル本体には影響しません。モデル上の同じ要素から別のビューを起こせば、ArchiMate本来の地味な見た目になります。

もう一つは「Specialization Manager」機能で、ArchiMateの各要素のサブタイプをモデルレベルで定義します。例えば「Amazon EC2はArchiMateのシステム・ソフトウェア要素のサブタイプ」と、Specializations Managerに登録するわけです。上の図ではこれらのAWSサービスを下の図のようにArchiMateの各要素に割り当てています。



それぞれのサブタイプに各AWSサービスのアイコンをセットすれば、要素側のSpecialization属性設定によって。対応するAWSアイコンがデフォルトで表示されるようになります (不要な場合はもちろん個別にアイコンを消すこともできます)。

AWS、Azure、GCPといろいろクラウド使っていて、それぞれの図はあるが全体を描いた絵が無い、とお困りの際は、ArchiMateでひとつにまとめてみてはいかがでしょうか。各社が提供するアイコンセットを使えば、「映える」分散アーキテクチャ図の出来上がりです。


「テクノロジー・プロセス要素」の出番!

ArchiMateで描けるものとして、ほかにもたとえばクラウドには付き物のCI/CDプロセスが挙げられるでしょう。ArchiMateなら、上で描いた「デプロイされる先のインフラ」に「デプロイに至るプロセス」を付け足すことができます。普段はバッチジョブとかバックアップとかアラートとか以外、あまり使い道が思いつかないArchiMateのテクノロジー・プロセスやファンクションの要素がここでは主役になります。たとえばこんなふうに。

「アーティファクト」から生まれるものとは?

CI/CDプロセスを経てクラウドにデプロイされるのが何かというと、それが前回のコラムでも取り上げられた「アーティファクト」ですね。ArchiMateにもアーティファクトという要素があって、そういったCI/CDプロセスでも扱われる、いわゆるビルドやリリース、バイナリと呼ばれるものや、またデータベースの物理エンティティの表現にも用いられます。

CI/CDプロセスを経てプロダクション環境のコンピューティング・ノードにデプロイされたアーティファクトはそこで実行され、アプリケーション・コンポーネントを「実現 (realize)」します。そしてそれはアプリケーション・ファンクションを経て、最終的にビジネス・ファンクションの実現に繋がります。ArchiMateだとこんな絵になりますが、この縦の繋がりが多数集まれば、それを束ねることでビジネス・オペレーションのモデルが出来上がります。テクノロジー・インフラもちゃんとビジネスと繋がっている、ということをこのように可視化すれば、IT部門とビジネス部門の相互理解も進みます。、



ビジネス部門にもArchiMateを教えてあげよう

テクノロジー・インフラだけならどんなツールを使っても描けますが、上記のようにそこからさらにビジネス・アプリケーションやオペレーションを書き足していけるのがArchiMateの良いところです。そもそもArchi®で描かれたArchiMateモデルはXMLで書かれたデータなので、物理的な平面に描かれた視覚表現でなければならない、という制約はなく、リモートGitに繋いだりして、アプリやビジネスなどの他の領域のデータを、それぞれのご担当に書き足してもらう、という方法も取ることができます。そして視覚表現は、時と場合に応じた適切な内容を、モデルのデータから書き起こす、というわけです。

ITスキルというとすぐPythonとかのプログラミング、という話になって、今やビジネス・パーソンも言語のひとつくらい、なんて言われかねない昨今ですが、こういうスキルや知識もありますよ、と水を向けてみるのも良いでしょう。ビジネス部門を始め、多くの部門の協力を得ることで、アーキテクチャ・デザインがデジタル・テクノロジーのおかげで全社的にスケールして、それがやがてDXなどの成就に繋がるかも知れませんよ。


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