近年、私たちの社会は急速にデジタル化の波にのまれています。これまでのデジタルトランスフォーメーションは、ビジネスプロセスの最適化や効率化に注力し、多くの組織が成功を収めてきました。しかし、コロナパンデミックやウクライナ危機などの出来事により、私たちのビジネス環境は一変しました。製造業においてはサプライチェーンが壊滅し再構築が必要になりました。またテレワークの普及によって変化した人々の拠点性や働き方に着目し、アフターコロナの地域内外のバリューチェーン構築が、デジタルトランスフォーメーションに新たな側面をもたらしています。
製造業を取り巻く従来のデジタルトランスフォーメーションでは、ビジネスプロセスのデジタル化が中心でした。しかし、社会の変化により、サプライチェーンの脆弱性が露呈し、その再構築が喫緊の課題となっています。ITアーキテクトは、サプライチェーン全体の可視性と透明性を高めるためのデジタルソリューションを設計し、実現する役割を果たします。具体的にはデータ分析、IoT、ブロックチェーンなどの技術を駆使し、リアルタイムの情報共有とリスクの早期発見で経営を支援します。
他業種においてもコロナパンデミックを契機に一気に普及したテレワークに代表される低コストのコミュニケーション技術を活かし、地域を越えた人単位の分業を促進することが求められています。アフターコロナの世界では、バリューチェーンは従来の単線型だけでなく、複線型で捉える必要があります。人々の拠点性が変化した今、地域内外でのバリューチェーンを統合し、地域の資源を活かした付加価値の創造が重要です。ITアーキテクトは、新たなバリューチェーンのデザインと実現において中心的な役割を果たすことで、地域経済の発展を支えることができます。
このようにITアーキテクトは、ITの領域にとどまらず、ビジネス全体の戦略における重要な指針を提供するリーダーとしての役割を果たします。単なる技術の導入に留まらず、ビジョンと戦略の融合が求められ、ITアーキテクトはその架け橋としての活躍を期待されます。
デジタルトランスフォーメーションが新たな局面に突入した今、ITアーキテクトの役割も進化し、サプライチェーンの再構築や複線型バリューチェーン実現に代表される重要な経営課題の解決にチャレンジするリーダーシップが求められています。デジタルアドバンテージを追求し、ビジネスの持続的な成長と競争力を支えるために、ITアーキテクトが果たす役割にますます注目が集まっています。
このような社会情勢を背景に2023年度のアニュアル・カンファレンスは「Beyond Digital Transformation 〜 デジタルアドバンテージへのITアーキテクトの新たな役割 〜」を主題として2023年11月9日に開催することが決定しました。カンファレンス講演の詳細については後日お知らせいたしますが、皆様にとって発見と学びの機会になれば幸いです。
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