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コラム BTABoK EngagementModel(4)~ ピープルモデルを適用するヒント ~

ピープルモデルの位置付けとその概要

前回までのコラムでは、パブリックレビューで公開中のBTABoKV3.0で新たに追加されたエンゲージメントモデルの中から複数のモデルを紹介してきました。今回は4つ目のピープルモデルの概要を紹介します。ピープルモデルに触れる前に、今一度「エンゲージメントモデル」の意義を振り返ってみたいと思います。

Iasaエンゲージメントモデルは、アーキテクトの組織が成熟した価値あるアーキテクチャの実践を達成するために使用する、活動、成果物、作業を組み合わせたものです。Iasaのエンゲージメントモデルの目標は、アーキテクチャチームを最大限に活用して、ビジネステクノロジー戦略を実現することです。


エンンゲージメントモデルでは、その構成要素として更に4つのモデルが存在し、先のコラムで既にアウトカムモデル、オペレーティングモデル、バリューモデルの3つが紹介されています。今回紹介する4つ目のピープルモデルは、BTABoKの構成では図1の赤い枠に位置付けられています。

図1 BTABoKエンゲージメントモデルにおけるピープルモデルの位置付け


では、ピープルモデルとは何か、その概要や特徴、活用について見ていきましょう。

エンゲージメントモデルをその内側から順に見て行くと、アーキテクチャの実践(Practice)に基づいて、適切な人々 (People) が、正しい決定 (Value) を行い、それが正しく実行 (Operation) され、目指す成果 (Outcome) を創る、というインサイド・アウトでの因果関係を表しています。

図2 エンゲージメントモデル全体像とピープルモデルの位置付け


この図でお分かりの様にピープルモデルは組織がアーキテクチャ活動を推進し、目指す成果(アウトカム)を継続的に生み出す源泉として位置付けられています。当然の事ながら、様々な知識やベストプラクティスを適切に活用できているか否か、また都度判断を正しく行っているか等、全て個人やチーム、組織の「ピープル」に依存します。ピープルモデルではその中で更に以下の6つの構成要素について相当数のページ(原文)を割いて解説しています。

  • コミュニティの重要性 (Community)

  • 職務定義書の重要性 (Job Description)

  • 拡張チームの重要性 (Extended Team)

  • 組織の重要性 (Organization)

  • 役割の重要性 (Role)

  • スキルとケイパビリティの重要性 (Skill and Capability)

ピープルモデルでは、単に個人やチームがアーキテクチャ活動を推進する際に必要なものは専門知識、スキルやベストプラクティスに留まりません。その組織に最適化された職務定義書や役割のベースラインに加えて、組織や部門、専門領域を超えた横断的な活動とチームの連携が成果(アウトカム)を生み出す上で極めて重要な役割を果たすと言う考えに基づいています。そのため、各領域の専門家やステークホルダーらから構成されるコミュニティや必要に応じて弾力的に拡張されるチームの重要性が解説されています。また、ビジネス環境にあったアーキテクチャチームの具体的な組織モデルとその特徴にも触れています。


ピープルモデルの特徴

ピープルモデルの特徴は、組織が環境に適応しながら活動し変化していく中で、日々アーキテクチャ活動に従事するチームメンバーや社内外のステークホルダーらの「人」にフォーカスした活動を先に紹介した6つの構成要素で捉えている点です。静的な形式的なモデルとしての捉え方ではなく、組織の近未来の活動を支え成果を可能にするアーキテクチャを創り出すアーキテクトの活動に言及しています。この6つの構成要素は、アーキテクト組織を作り活動を維持・推進していく上で具体的で示唆に富むものです。以下、従来のITABoKV2.0ではあまり触れられていない2つの項目を取り上げてみます。


コミュニティの重要性

ピープルモデルでは、コミュニティという言葉を単なる人の緩やかな集まりではなく、組織内と組織外の関与する複数の専門家達(ベンダーやサービスプロバイダーも含む)の生きた集団、という意味で使っており、以下の様に定義しています。

組織内外のアーキテクトと拡張チームメンバーで構成され、その組織のアーキテクチャのケイパビリティを向上させ、ビジネスおよびテクノロジー戦略を実現する目標を共有する集団。コミュニティは、組織内外の複数の専門家とステークホルダーの集合体であり、センター・オブ・エクセレンスやプロフェッショナリズムなどの表現で呼ばれる場合もある。


積極的な解釈としては、組織内外を含むアーキテクトのコミュニティは、組織のアーキテクチャの善し悪しを決定づける可能性がある事、またこのコミュニティがエンゲージメントモデルに基づく実務上の取り決めや個人のコンピテンシーの強化に繋がる事、ステークホルダーを含むコミュニティの運営に効果的な場合はアーキテクチャそれ自体が組織にとって価値あるものと認識され得る事、等の示唆や効果が紹介されています。その他、成果をあげるためのコミュニティの構造や専門家同志の対立、アーキテクトの適切な配置やメンタリングについても解説されています。


組織の重要性

ピープルモデルでは、アーキテクトの組織について以下の様に紹介しています。

組織とは、一般的にはその組織体の構造とキャリアパス等を定義するものであるが、一方でビジネスと連携しアーキテクトのコミュニティが強化されるなど、よく検討された組織は専門的連携が無いグループよりもはるかに効果的な活動に貢献する。


従来の静的な組織モデルではなく、コミュニティとの連携と活動を伴う組織を顧客体験の強化や価値の流れを創る視点から組織モデルが考察されています。また、グローバルな組織におけるシェアード・サービスモデルやコンサルタント会社の例、パートナー会社との連携の例が紹介されています。

更に、組織に必要とされるケイパビリティを特定するツールとして、アーキテクチャ組織のアセスメント用に開発された「アーキテクチャ・ケイパビリティカード」が紹介されています。アーキテクチャ組織によるエンゲージメントのタッチポイントを記述するキャンバスカードのツールについても記載されており、典型的なIT組織内に設置されたアーキテクトチームの形態とその特徴が解説されています。


ピープルモデルの活用

エンゲージメントモデルを俯瞰すると、このピープルモデルはその根源を支える最も重要な基盤の一つと言えます。従来の一般的な静的な職務上の役割や責任範囲やチーム構成に留まらず、顧客体験や成果に結び付いたアーキテクチャ活動を持続的に可能にするためには必須の基盤と言えます。これを参考に要所に適用する事によってエンゲージメントを持続する基盤としてのピープルモデルの形成が可能となります。その形成と共に個人と組織のケイパビリティの底上げとアーキテクチャ活動を通じて、組織の成果への継続的な貢献への道を開くヒントがここにあるのでは無いでしょうか。


Iasa Globalのホームページでは、BTABoKのコンテンツに関連した解説付きeラーニング用コンテンツLearning Shotsが多数掲載されています。アーキテクト組織について興味を持たれた方は、是非こちらのコンテンツから関連するトピックの解説をご覧下さい。


IasaGlobal People Model / Community他、英語原文ページ:





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