DX時代のEA

 このコラムでは、Iasa日本支部が標榜している「DX時代のエンタープライズアーキテクチャ」について、いくつかの見識を紹介し、考えていきたいと思います。


 まず、デジタル時代のアーキテクチャをどうイメージするかですが、IBM社が提示した以下のチャートが参考になるかと思います。

図1:https://bp-affairs.com/news/2018/08/20180827-7910.html より


 デジタルテクノロジーの進展は、従来の業種、業態の枠を破壊し、テクノロジーを戦略的に活用していかにビジネスモデルを変革できるかが、重要な課題となっています。ここでは、ビジネスモデル変革を考える上で、従来のフィジカルな顧客接点と、デジタルな顧客接点の双方を最適化していくことが不可欠だとしています。


 このデジタル時代の次世代アーキテクチャは、企業が自社だけでなく外部との連携による新たなデジタルビジネスを実現する「デジタル変革」へと進化するためのロードマップを提示しています。


 また、このチャートでは、顧客視点でのデジタル化と事業体におけるデジタルサービスが連携し、ビジネスサービスとデータサービスに繋がっています。このアーキテクチャを絵にかいた餅ではなく、実現性のあるものとして描くことが出来たときから、その企業でのDXは始まるのではないかと考えます。


 さて、アーキテクチャをデザインするためのアプローチですが、その指針が、デジタルトランスフォーメーション研究会委員も務められた名古屋大学の山本修一郎教授が以下の図で示されています。


 以下、「1. DX戦略をどうするか(1)-DXの目的と定義-」 山本修一郎から抜粋。

以下、抜粋ですが、詳しくは以下を参照ください。

https://www.bcm.co.jp/solution-now/cat-solution-now/2020-03_2539/


 現在の企業をデジタル企業に変革することがDXである。そこで経営、事業、ITシステムに分けてDXをみてみると、上記のようにDXを分解できる。すなわち、DXには、経営変革、ビジネス変革、IT変革がある。経営変革では組織、文化・風土ならびにビジネスモデルを変革することによりデジタル経営を実現する。

 ビジネス変革では、業務プロセスならびに、事業能力をデジタル化することにより、デジタルビジネスエコシステムを実現する。ここで、事業能力はビジネスケイパビリティのことである。ビジネスケイパビリティは欧米では企業が提供するビジネスを明確化するために用いられる基本的な考え方であり、事業能力をマップ化することにより、創出価値の大小で優先順位付けることができる。現行の事業能力マップが定義されていれば、デジタル化の脅威を受けるのはどこか、デジタル化による創出価値が高いのはどこかを明確にでき、優先順位の高い事業能力からDXを推進することで、DXロードマップを作成できる。

 IT変革では、現行のITシステムのモノリスアーキテクチャをマイクロサービスアーキテクチャによる適応型ITシステムに刷新することにより、データとデジタル技術を活用できる変革即応アーキテクチャを実現する。マイクロサービスアーキテクチャは、事業能力と対応する独立性の高いマイクロサービスを疎結合することにより、事業能力の変化に際して対応するマイクロサービスだけを変更できる。これに対してDXの足枷になっている老朽システムは機能要素が複雑に密結合しているモノリスアーキテクチャで構築されているため、特定の機能変更が老朽システム全体への影響を探索して確認する必要があり、ビジネス変化に即応できない。ITシステム刷新が必要な理由はここにあり、単に老朽システムをクラウドに移行すればいいというような単純な話ではない。

 文中の事業能力(ビジネスケーパビリティ)とは具体的にどんなものでしょうか?それぞれの組織が定義していくものでありますが、定義するうえでは、ITABoKのビジネスアーキテクトのケイパビリティ定義が参考になるかと思います。ITABoK V2デジタル版(P218~P267)を参照ください。


 では、アーキテクチャを企業の財産として、整備し維持していくには、どうすれば良いのでしょうか?以下のような推進体制を構築し、アーキテクチャを進化させている事例を紹介します。それは、AMO(アーキテクチャ・マネージメント・オフィス)を組織して推進してする事例です。


 AMOは、アーキテクチャマネージャーを中心として、ユーザー代表、ビジネスアーキテクトなどの専門領域アーキテクトで組織され、コラボレーションポータルサイトにメンバーが登録されます。

 

 AMOにより、レビュー・承認されたアーキテクチャはポータルサイトに公開され、システム開発、運用、ユーザ等のプロジェクトにかかわるステークホルダーが参照することが出来ます。またAMOは、常に数年先のアーキテクチャ青写真を描き、詳細な落とし込みは各現場組織に委ねるといった振る舞いも必要となります。

 

詳しくは、Iasa日本支部の中山理事のブログ「アーキテクチャ・マネジメント・オフィス(AMO)」 https://www.it-innovation.co.jp/2016/08/29-004910/ 参照ください。


 アーキテクチャを描くには色々な方法がありますが、Iasa日本支部では、ArchiMateによる可視化を推奨しています。ArchiMateはThe Open Groupによって開発・維持管理されているエンタープライズ・アーキテクチャを記述するためのグラフィカルな言語であり、オープンな標準です。さまざまなプロジェクトやビジネスの利害関係者に関連するさまざまな視点を作成するために使用することができます。


 ArchiMateは、AMOによるレビューやアーキテクチャの改善・維持に適しており、ステークホルダー間の共有が可能となると考えます。Iasa日本支部では、1回/月の勉強会を開催しています。Zoomでの参加となりますので、気楽に参加できるかと思います。詳しくはIasa日本支部 ArchiMate 勉強会 zoom_admin@iasajapan.orgXまでお問い合わせください。



 以上、筆者の「DX時代のエンタープライズアーキテクチャ」への思いと一にする考えのご紹介というコラムになりました。


まとめますと、

  1. 現状を把握し、アーキテクチャを描くとことから始まり

  2. 経営改革、事業改革、IT改革と進めながら

  3. AMOなどの体制の整備を並行して進めていくなかで

「ビジネスモデルの変革を起こし、エンタープライズアーキテクチャを進化させる」

ことになるかと思います。


 ビジネスモデルの変革を伴う改革となり、その壁は高いですが、1年前のコラムで紹介した「今すぐにデジタルトランスフォーメーションの旅に乗り出さない組織は、混乱して取り残される危険性があります。」というアーロン(Chairman of Iasa Asia Pacific)の主張にあるように、事態は待ったなしの状況です。


 カンファレンスや勉強会の開催などIasa日本支部の活動が、この「DX時代のエンタープライズアーキテクチャ」への道を切り拓くための一助となるよう努めていきたいと思います。何卒、よろしくお願いいたします。



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