第4回は ITABoKにおけるアーキテクチャーの5つの柱「ビジネス・テクノロジー戦略」、「IT環境」、「デザイン・スキル」、「ヒューマン・ダイナミックス」、「品質属性」のうちの「IT環境」に関するコラムです。
「IT環境の柱」のカテゴリーは、以下の文章から始まります。
IT環境は、ソリューションが稼働するように設計されなくてはならない領域を解説し、提供する対象物へ多くの制約事項を設定します。これらのスキルは重要度の点で一般的に低く見られ、最も評価の低いものはITオペレーションとガバナンスでした。
これは、芳しくないプロジェクト成功率の「as is」(現在の状態)の状況を示しています。IT環境に対する知識がなければ、ソリューションのコストは組織に提供できるビジネス価値を打ち消してしまいます。(ITABoK P158)
ここでは、IT環境のスキルの評価は一般的には低く見られているとされています。しかし、その良否によって、情報システムのビジネス価値への影響に大きく左右されることをメッセージしています。
IT環境に対するケイパビリティには、以下に示すように多岐に亘ります。
「技術的プロジェクト・マネジメント」
「資産管理」
「変更管理」
「インフラストラクチャ」
「アプリケーション開発」
「ITガバナンス」
「テストの手法、ツール、テクニック」
「ナレッジ・マネジメント」
「意思決定支援」
「プラットフォームとフレームワーク」
「IT環境」のカテゴリーのIasaにおける定義の広さに驚かされた方も少なくないかと思います。また、これらの遂行能力を身に着ける時間と努力は計り知れないと感じられた方もおられるかと思います。
ITABoKでは解決策のひとつとして、「インフラストラクチャ」の説明で以下のことが述べられています。
アーキテクトに対する主な抵抗力や課題
アーキテクトはITインフラストラクチャの全ての局面に取り組む機会を得た経験がない可能性があり、組織内のエンジニアリングやオペレーションのステークホルダーとの信頼できるアドバイザー/メンター関係を築く必要がある場合もあります。
これは、アプリケーション開発のスキルセットからインフラストラクチャ・デザインへと移行中のアーキテクトに特に当てはまります。
最後にITインフラストラクチャの展望は自社運用型、他社運用型、ハイブリッドのクラウドソリューションの導入と共に変化しており、これらはネットワーキング(レイテンシー)、データセキュリティ、アクセスと認証に対する更なる品質上の関心事をもたらすでしょう。(ITABoK P171)
このアドバイザー/メンター関係を築くことは、どのような局面でも有効となり、またアーキテクト活動を効率的にするものです。メンターに関しては「アプリケーション開発」の説明でも述べられています。
大規模組織には、大体の場合アプリケーション開発に対する最終的な責任を担う開発マネジャーが存在します。この場合、アーキテクトはアプローチの定義付けと、それがプロジェクトでどのように機能するかに関する専門的な見解を提供します。
小規模組織では、アーキテクトはアプリケーション開発に対するより多くの責任を担うかもしれません。
アーキテクトはプロジェクトプランニングと各種のミーティングの構成においてインプットを求められ、プロジェクトマネジャーによって作成されたプランのレビューを求められるでしょう。
また、アーキテクトはプロジェクトを担当するアーキテクトのドキュメントに1つの見解として開発環境を文書化し、開発チームをコーチし、彼らのメンターとなるでしょう。(ITABoK P175)
ここでは、アーキテクト自身が、開発マネジャーを支援し、開発チームをコーチするメンターとなることを述べています。
しかしそのためには、アーキテクトに対するアドバイザー/メンターの存在が大きく左右します。アーキテクトはアドバイザーやメンターの良否により成長の度合いは変わります。良きアドバイザー、メンターとの出会いを大切にしたいものです。
その出会いを大切にしたうえで、それぞれのスキルの成長により、開発チームをコーチし、彼らのメンターになることで、アーキテクトとしての地位を揺るぎないものとすることが出来ると考えます。
アドバイザーやメンターが身近に存在するとは限りません。コミュニティへの参加や外部の人とのネットワークの重要性を再認識される事かと思います。アーキテクチャーラウンドテーブルのコミュニティ活動が、このネットワークつくりに役立つことを願っております。
最期に、「スキルについての問い」でコラムの締めにしたいと思います。
問い 「スキルとノウハウの違い」は何でしょうか?
色々と定義や比喩はあるかと思いますが、ひとつの考えを以下に記載します。
皆さんの考えやご意見も、いただきたいと思います。よろしくお願いします。
スキル(技術力)とは、人に備わった技量のことで、何かを実際にやり遂げる力のこと
ノウハウ(知識・方法)とは、伝聞や経験から、何かが出来る知識や方法のこと。
プロ野球の野手に例えれば、野球のバッターがヒットやホームラン実際に打てることがスキル、ヒットやホームランはどのようにして打てば良いかを知っており教えることが出来るのがノウハウ、と例えることが出来ます。
ノウハウとスキルが揃って、それぞれが一定レベルの人が現役で稼ぐことが出来、引退後も、監督やコーチとして球界で長く活躍できるのです。スキルはあっても、ノウハウがない場合は、現役引退後は球界から離れていくことになるのでしょう。
ITに関しては、ノウハウはWebサイトや巷の本屋にもあふれている状況です。これからはスキルを身に着けることが、これからはますます重要になるかと思います。問題はどんなスキルをどのように身に着けるかですが、Iasa日本支部としては、アーキテクトに求められるスキルを身に着けることに支援し、バックアップしていきたいと思います。コミュニティへの積極的な参加をお願いいたします。
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